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フェアリー(英:fairyまたはfaery)は、主に妖精と訳される、西洋の神話や伝説に登場する気まぐれで、人間と神の中間的な存在の総称。日本語でのこびと、妖怪、竜(ドラゴンやワーム)、仙女、魔女にあたる。狭義ではイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、ノルマンディ地方などの神話・伝承の精霊や超常的な存在を指し、広義には他の国・地方・民族の同様の存在、たとえばゲルマン神話のエルフなどを含む。人間に好意的なもの、妻や夫として振る舞うもの、人にいたずらしたりだましたり、命を奪おうとするもの、障害として立ちはだかるもの、運命を告げるものなど、さまざまな伝承がある。
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資格と仕事コティングリー妖精事件の後は、絵画や文学に羽をもつ非常に小さな人型の姿で登場することが多い。フェアリーという言葉は「運命」を意味するラテン語に由来する。世界中のさまざまな神話や伝承に共通する面が見られるのと同じように、同様のフェアリーが類型としてさまざまな名前や姿形で異なる地方、民族の伝承にあらわれる。
フェアリーの起源にはさまざまなものが考えられ、被征服民族の民族的記憶、異教の神や土着の神が神格を剥奪されたもの、社会的に差別・追放された人々を説明するための表現、しつけのための脅しや芸術作品の中の創作、などが挙げられる。小さい姿に描かれたり、遠い場所に行ってしまうといった話は、意識の中で小さくなってしまった存在であるということを表している。
ケルト族の神話や伝説にはいろいろな種類の数多くのフェアリーが登場する。フェアリーはまた「小人(こびと)」とも言われていたが、ドワーフ、レプラコーン、ゴブリン、メネフネなどの他の神話の生き物も同じように「小人(こびと)」と言われている。アイルランドではシー(Sidhe)、スコットランドではディナ・シー(Daoine Sith)として知られている。
フェアリーの身長については諸説あって定まっていない。昔から伝わるフェアリーは人間と同じかもしくは人間より背が高いとされている。ブリトン族の人々は、フェアリーは冷たい鉄が苦手であると信じていた。歴史家や神話の研究者は、この迷信の存在から、ケルト族がやってくる前にグレートブリテン島に住んでいた人々の民間伝承がフェアリーの起源であると推測している。これらの人々の武器は石で作ったものだけであり、鉄の武器をもつケルト族の方が優れていた。
人の姿を取らないフェアリーも少なくない。旅人を惑わすウィル・オ・ウィスプは日本でいう鬼火、人魂である。ドラゴンやワームは克服が困難な障害や敵の象徴として物語に登場し、主人公がその弱点を策や特別な武具をもって攻め倒すというモチーフが繰り返し語られる。これは日本の八岐大蛇の伝承や、インドの神話でのヴリトラ(障害)と同様である。家畜や身近な動物の姿のフェアリーも多い。猫は妖精的な生き物とされ、魔女の使い魔、魔女の集会に集まると考えられたり、そのものが妖精ケット・シーKait Sithとされる。犬も A. C. ドイルの「バスカヴィル家の犬」や J. K. ローリングの「ハリー・ポッター」シリーズに見られるように、墓守あるいは死に結びつけられる黒妖犬として登場する。これはギリシャ神話のケルベロスの影響もあるだろう。馬の激しい気性は、御しがたい川の激流に結びつけられ川馬ケルピーや人を乗せて死ぬまで走る夜の白馬などとして登場する
今日は、フェアリーは人間に好意的で優しい性格の生物とされることも多いが、歴史的には必ずしもそうではない。例えばフェアリーが人間の子供をさらって代わりに彼らの子供を置いていくという「取り替え子」(チェンジリング)の迷信は中世では広く伝わっていた。このモチーフは吟遊詩人のトーマス・ライマーやタム・リンの歌の中に現れている。