アジ・ダハーカ(Aži Dahāka)はゾロアスター教に登場する怪物。
バビロン(古代メソポタミア地方)にあるとされているクリンタ城に棲み、容姿は3頭3口6目を持ち、竜のような体型をしている。悪神アンラ・マンユの配下であり、あらゆる悪の根源を成すものとして恐れられた。アジは「蛇」という意味だが、ダハーカの意味はよくわかっていない。インド神話の敵対的種族ダーサと同語源であるという説、「人」という意味で「人-蛇」を意味するという説[1]などがある。文献的には『アヴェスター』(前12〜6世紀ごろ?)が最古のものだが、図像表現に限るならば紀元前2100〜1800年のバクトリアにさかのぼる[2]。
神話においては、千の魔法などを駆使して敵対する勢力を苦しめ、アフラ・マズダ配下の火の神アータルなどとも激しく戦った。 その後、英雄スラエータオナがアジ・ダハーカを退治しようとするが、剣を刺してもそこから爬虫類などの邪悪な生き物が這い出すため、これを殺すことができなかった。そのため最終手段としてダマーヴァンド山の地下深くに幽閉したといわれる。
比較神話学的には、アジ・ダハーカはインドの蛇の怪物ヴリトラに対応すると考えられている。ヴリトラの別名アヒ(ahi)「蛇」がアジ(aži)と言語学的に対応し、3つの頭という属性が、ヴリトラとセットになって神話に登場するヴィシュヴァルーパに対応するのである。
イスラム教化後のイランでは、フェルドウスィーの『シャー・ナーメ』に悪王ザッハークという名前で登場し、フェリドゥーン(ゾロアスター教におけるスラエータオナのこと)に退治される。
終末の時にザッハークは本性たるアジ・ダハーカとしてよみがえる事が約束されている。解き放たれた暗黒竜は人、動物の3分の1を貪るという。しかし神話的英雄であるクルサースパに倒され最終的には殺される運命にある。この伝承はキリスト教の黙示録、千年王国思想と類似している。
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